緑内障
緑内障とは
緑内障とは何らかの原因で視神経が障害され視野(見える範囲)が狭くなる病気です。

人間は眼球の奥にある網膜で光を感じ、その信号を脳に送ることによりものを見ています。 その際に、眼球から脳をつなぎ信号を伝えるのが視神経です。緑内障は、この神経線維が眼圧の上昇などでゆっくりと減ってゆき視野(見える範囲)が狭くなるのです。

視神経の眼球の出口(視神経乳頭)には、小さなくぼみがあり、緑内障ではこのくぼみが拡大します(視神経乳頭陥凹拡大)。 視神経陥凹拡大で視神経線維の数が減少し、結果として視野に欠けた部分がでてくるのです。

大規模な調査によると、40歳以上の日本人には、17人に1人(約6%)の割合で緑内障があることがわかりました。決して珍しい病気ではありません。

緑内障の視神経障害は眼圧の上昇が要因のひとつといわれています。
眼圧とは
眼圧とは眼の中の圧力のことで、眼の丸い形を保ったり、血液の流れなどを一定に維持したりする働きを持っています。
眼圧は、眼の中の水(房水)が作られる量と流れ出る量のバランスで決まります。
眼の中の水の作られる量が多すぎる場合や眼から出ていく水の量が少ない場合に上昇します。
ひとりの人の眼圧はいつも一定というわけではなく、1日の間でも時刻により変動します。

眼圧の正常値は10〜21mmHgといわれています。ただ眼圧が正常範囲にあるからといって緑内障にならないとは言いきれません。
日本人の緑内障の多くは眼圧が正常範囲の「正常眼圧緑内障」だからです。
緑内障の原因
緑内障では視神経が徐々に障害されていきますが、その真の原因はいまだはっきりしていません。
眼圧が高いと、(おそらくは視神経が圧迫されるため)視神経障害が起こることがわかっていますので、高眼圧が緑内障の原因のひとつであることは確かです。
正常眼圧緑内障
緑内障は眼圧が高くなり、視神経が障害されることが原因です。 しかし、眼圧が高くなくても緑内障(正常眼圧緑内障)になる場合があります。
日本人の緑内障の多くは正常眼圧緑内障です。 視神経が圧迫に弱いために正常範囲の眼圧でも視神経がいたんでしまうのです。視神経への血流障害、視神経のねじれや引っ張りなどの機械的障害、視神経に対する毒性物質、 など多くの原因が考えられています。

緑内障の治療=眼圧を下げる
緑内障の視神経障害に対して確実な治療法は、現在のところ眼圧を下げることだけです。眼圧が高い緑内障で眼圧を下げることが重要なことは明らかですが、 正常眼圧緑内障でも、治療前のもとの眼圧(ベースライン眼圧といいます)から眼圧を更に下げることで、緑内障の進行を抑えるのです。 緑内障の治療は原則として眼圧を下降させる点眼薬になります。その効果が不十分な場合には、眼圧をさげる手術が必要になることもあります。
閉塞隅角緑内障について
隅角が非常に狭いために眼圧が上がってくる状況を閉塞隅角緑内障(または閉塞隅角症)と呼びます。 ほとんど全ての隅角が短時間に閉塞するために眼圧が急激に上昇する「急性閉塞隅角緑内障発作」では、強い眼痛や頭痛、嘔吐などが見られるだけでなく、 処置が遅れると失明に至ることもあるため、レーザーや手術などの適切な処置ができる眼科医を直ぐに受診する必要があります。
 このように閉塞隅角緑内障は、一度発症すると困難な状況となることが多いため、予防が非常に重要となります。リスクファクターとして「高齢」、 「女性」という要因の他に、「遠視」の人に閉塞隅角緑内障が多いことが知られています。そのような方は眼科を受診し、 閉塞隅角緑内障の可能性の有無につき検査をお勧めします。
緑内障の検査
眼圧検査:眼の「かたさ」がどれくらいなのか測定します。治療の効果の判断基準になります。

眼底検査:視神経の形状などを観察します。緑内障では正常に比べ視神経の凹みが変形し大きくなります。

視野検査:緑内障は見える範囲(視野)がだんだんと狭くなっていく病気です。
視野のどこがどの程度見えていないかを調べます。緑内障の進行程度を調べます。
緑内障の治療
緑内障の治療は病気の進行をくい止めるため、眼圧を低くコントロールすることが最も有効とされています。治療法としては薬物(点眼)、 レーザー、手術がありますが、点眼が最も一般的です。
眼圧を下げるために使われる点眼薬は、主に房水の産生量を減らしたり、房水の流れをよくする薬です。最初は1種類の薬で眼圧、 視野などの様子をみながら、途中で変更したり、場合によっては2〜3種類を併用することもあります。
緑内障は気づきにくい病気です
緑内障は自覚症状に乏しく病気が進行するまで気づきにくい病気です。 そのために初期の緑内障は他の症状を訴えて受診した際に偶然発見されたり人間ドックや健康診断の眼底検査(カメラ)で発見されることが多いのです。
緑内障の多くは非常にゆっくり進行していきます。失明に至ることは決して多くありません。しかし、緑内障で失われてしまった視野は残念ながら回復しません。 ですから早期発見早期治療が大事な病気なのです。
一度、緑内障と診断された患者さんのほとんどは一生に渡る点眼や通院が必要となります。緑内障という病気と適切な関係を保ちながらつきあっていくことがとても重要となります。緑内障と診断されたからといって必要以上に落ち込んだり、 心配しないようにしてください。
重要なのは、病気(緑内障)を放置せずに眼科での定期検査と治療を継続することです。 そのためには日常の生活や仕事にできるだけ負担をかけずに通院できる眼科を選んだり、点眼を忘れにくい生活習慣を確立したりすることも大事なことです。